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脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?

脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?

脱コロナのいま、銀行融資における試算表の位置づけは変化しつつあります。これからの銀行融資は、試算表が「起点」になる。それがいったいどういうことなのか? お話をしていきます。

目次

試算表はありません。

きょうは、2023年6月22日。世の中はすっかり脱コロナのフンイキがありますが。コロナ前の「風景」に戻るものもあれば、戻らないものもあるわけで。

この点、「コロナ前とは違うなぁ」ということとして、銀行融資・銀行対応が挙げられます。脱コロナを迎えて、以前とは変化があらわれていることに、社長は気づいているでしょうか。

変化の1つが、「試算表」です。コロナ前と脱コロナのいまとでは、試算表の位置づけが変わりつつあります。いまとこれから先とでは、さらに変わっていくはずです。

どう変わっていくのか? 銀行融資・銀行対応を考えるうえで、試算表の重要度が上がり、試算表が「起点」になります。逆に、「試算表はありません」だと困ったことになる… ということです。

そのあたり、このあとさらに深掘りしてお話をしていきます。こんなお話です↓

脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?
  • まずはつくる
  • 精度を高める
  • 銀行に伝える

今後の銀行融資の受けやすさ、ひいては、資金繰りの良し悪しに関わるところですから押さえておきましょう。

脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?

まずはつくる

そもそも、なぜ、銀行融資・銀行対応において試算表が必要なのか? 試算表は「現状」を数値化・可視化できるツールだからです。試算表があることで、現状を客観的に把握できます。

逆に、試算表がないと「個人(おもに社長)の感覚」に頼らざるをえず、客観性を持って他者と共有するのは困難です。なので、現状を知りたい銀行としては、試算表がないと困ってしまう…

というのは、いまに始まったことではありません。ところが、いま、試算表の重要度がさらに上がったのはどうしてか? 銀行に「伴走支援」が求められるようになったからです。

伴走支援とは、端的に言えば「事業性評価 + 事業支援」ということになります。事業性評価とは、「融資先の事業内容の良し悪しや将来性を評価する」ことです。事業支援とは、「融資先の本業を融資以外の面でも支援する(各種コンサル)」ことをいいます。

で、銀行が伴走支援を実行するにあたって、必要になるのが「現状把握」です。現状がわかるから伴走支援が可能なのであり、現状がわからなければ伴走支援はできません。

伴走支援できないとどうなるか? まず、金融庁は銀行に対して伴走支援を勧めているので、対金融庁という点でよろしくありません。また、伴走支援が進まなければ、他行との競争に敗れることにもなりかねない…

だから、銀行はいま、伴走支援にチカラを入れているのです。その前提として、「現状把握」のためには、試算表というツールが必要であり、まずは試算表をつくれる会社が、銀行にとってはターゲットになります。

逆に、試算表をつくらない・つくれない会社は、今後、ターゲットから外れていくことになるでしょう。つまり、銀行からの支援(融資も融資以外の支援も)が遠ざかるわけです。

なので、まずは試算表をつくることが大切になります。いまは、試算表をつくっていないのであれば、つくれる体制を整えるようにしましょう。税理士に相談するのも1つの方法です。

ちなみに、翌月10日までには、前月分の試算表をしあげることをおすすめします。しあがりが遅くなればなるほど、情報は古くなるので「現状」とは言えなくなってしまうからです。

精度を高める

試算表はつくりさえすればよいか? といえば、そんなことはありません。まず、精度を高める必要があります。言うまでもなく、精度が低い試算表では「現状」を正しく把握できないからです。

たとえば、売上代金の入金時に、売上を計上している会社があります。しかし本来は、商品の納品時やサービス提供時といったタイミングで計上すべきです。

仕入についても同じであり、仕入代金の支払時に仕入の計上をしているのでは遅すぎる、と言っていいでしょう。これらは、精度が低い試算表の代表例にあたります。

また、減価償却費の計上を毎月していなかったり(決算時に1年分まとめて一括計上している)、棚卸を毎月していなかったり(決算時にいちどしか棚卸をしない)、年払費用を支払時に一括費用処理している(毎月の費用にあん分していない)、なども精度が低い試算表だと言えます。

そのような試算表では、現状を正しく把握することができません。銀行にとっても、「アテにならない試算表」ということになってしまいます。ヘタをすると、決算書の正確性まで疑われることにもなり、試算表を見せることが逆効果になりかねません。

ですから、試算表をつくるのであれば、精度を高めることを忘れないようにしましょう。そのあたり、こちらの記事も参考にどうぞ↓

簿記やら仕訳やらに関わるところでもあるので、よくわからないようであれば、税理士に質問・相談をしながら対応するのがおすすめです。このとき、税理士には「趣旨」を伝えることをお忘れなく。つまり、銀行融資・銀行対応の起点になる試算表をつくりたい、と伝えることです。

税理士も、「決算書の精度は高くても、試算表の精度は低くてもOK」と考えているケースがあります。試算表はあくまで試算であって、確定した数字ではないのだから、という考え方です。そうなると、現状把握に適した試算表はつくれませんので気をつけましょう。

銀行に伝える

試算表をつくった、精度も高めた。まだ、おしまいではありません。あたりまえのことではありますが、できた試算表は、銀行に渡しましょう。渡さなければ、試算表の存在が伝わらないこともあります。

毎月、会って渡す(銀行まで行く、銀行に取りに来てもらう)のもいいですし、メールで送るのもよいでしょう(それができる銀行であれば)。毎月会うのもお互いに負担でしょうから、ふだんはメールで送って、4半期に1回は会って渡すのがおすすめです。

そもそも会う必要はあるのか? というのであれば、あります。会って話をすることで、銀行はより現状の理解を深めることができますし、伴走支援を実行しやすくもなるからです。

なので、銀行と会って話をするときには、伴走支援を意識した内容の話ができるとよいでしょう。試算表にもとづく現状については当然として、現状から見た課題や問題、いま取り組んでいることや、これから取り組もうと考えていることなどについても伝えます。

すると、銀行のほうから助言なり、支援の提案なりにつながるものです。資金面では融資の提案はもちろん、取引先のマッチングや、人材採用・教育、物流管理、IT導入、事業承継などなど、コンサルティングの提案をしてくれる銀行もあります。

助言や支援を受ける機会が少なかったり、大企業などに比べると情報収集も不足している中小企業にあっては、銀行の助言や支援、情報提供には「価値」があるはずです。

銀行は、融資を受けるだけの相手ではありません。脱コロナにあっては、銀行も伴走支援に熱心なのですから、その支援を存分に受けられるように、起点としての試算表をつくり、それを銀行に渡し、伝えることを実践していきましょう。

まとめ

脱コロナのいま、銀行融資における試算表の位置づけは変化しつつあります。これからの銀行融資は、試算表が「起点」になる。それがいったいどういうことなのか? お話をしてきました。

まずは、試算表をつくることが大事ですが、つくるだけで足りません。精度を高めつつ、その試算表をもとに、銀行に伝えるべきことを伝えていくことが、社長の役割として重要になります。

    脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?
    • まずはつくる
    • 精度を高める
    • 銀行に伝える
脱コロナの銀行融資は試算表が起点になる、とは?

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