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勘定科目「1年以内返済長期借入金」を見て社長が考えるべきこと

勘定科目「1年以内返済長期借入金」を見て社長が考えるべきこと

勘定科目の1つ、1年以内返済長期借入金について。その金額を見て、社長が考えるべきこととは何なのか?と聞かれて、回答に窮するようであれば要確認です。放っておけば、資金繰りにも窮します。

目次

そんな勘定科目あったっけ?

決算書のうち、貸借対照表の「負債の部」を見てみましょう。銀行から融資を受けている会社であれば、「1年以内返済長期借入金」という勘定科目があるはずです。

文字どおり、1年以内に返済する借入金の金額であり、1年を超えて返済する「長期借入金」とは区別するための勘定科目になります。ですから、もしも、1年以内返済長期借入金を区分することなく、長期借入金の一本表示になっている場合には、すみやかに区分をしましょう。

それはそれとして、勘定科目の1つである「1年以内返済長期借入金」を見て、社長は何を考えるべきなのか?と聞かれて、社長は明確に回答することができるでしょうか。

い、い、いや…と困ってしまうようであれば、このあとのお話は要確認です。放っておくと、資金繰りに問題を生じることになりかねず、問題への対応も後手に回ってしまいます。

では、1年以内返済長期借入金を見て社長が考えるべきこととは?おもには、次の3つです↓

1年以内返済長期借入金」を見て社長が考えるべきこと
  • 簡易キャッシュフローとの比較
  • 経常運転資金分の借入が含まれるか
  • 1年以内返済長期借入金分を借りる

これらを見てなお、「?」ということかもしれませんが。このあと、順番に解説をしていきます。

1年以内返済長期借入金を見て社長が考えるべきこと

簡易キャッシュフローとの比較

簡易キャッシュフロー、という考え方があります。算式でいうと「税引後利益+減価償却費」です。決算書のうち、損益計算書の末尾にある「当期純利益(=税引後利益)」と、損益計算書のなかほどにある「減価償却費」の金額を探して合算してみましょう。

その「簡易キャッシュフロー」と、貸借対照表に掲載されている「1年以内返済長期借入金」の金額とを比較します。比較したうえで、「簡易キャッシュフロー>1年以内返済長期借入金」が望ましい姿です。

もはや説明不要かもしれませんが、あえて説明をするならば…

まず、簡易キャッシュフローは、借入金の返済原資にあたります。借入の元金は、税金を払ったあとの利益(手元に残ったおカネ)のなかから払うことになるからです。言い換えると、元金返済は経費にならないから、ということでもあります。

で、減価償却費を加算するのは、減価償却費が「支出をともなわない費用」だからです。このあたりが「ようわからん…」という場合には、以下のブログ記事も参考にどうぞ↓

以上から、簡易キャッシュフローは、借入金の返済原資であることがわかります。いっぽうで、「1年以内返済長期借入金」とは言うなれば、「年間返済額」です。これから1年で返済すべき金額が、1年以内返済長期借入金になります。

だとすれば、「簡易キャッシュフロー>1年以内返済長期借入金」が望ましいこともわかるでしょう。逆に、「簡易キャッシュフロー<1年以内返済長期借入金」となれば、返済原資が足りず、手元の預金を取り崩して返済をすることになります。

その状態が続けば、遅かれ早かれ資金ショートです。なので、社長は、1年以内返済長期借入金を見たら、簡易キャッシュフローとの比較を考えるようにしましょう。

経常運転資金分の借入が含まれるか

借入金の返済原資は、簡易キャッシュフローだと言いました。ところが実は、「返済原資として簡易キャッシュフローを必要としない借入金」もあるのはご存知でしょうか。

ずばり、経常運転資金分の借入金です。経常運転資金とは、算式で言うと「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」になります。

これは、会社が「事業を続けている限り、立て替えを必要する金額」であり、銀行借入で手当するのが財務のセオリーです。ただし、せっかく借入しても、毎月分割返済していれば手元のおカネは減るので、資金繰りは悪くなってしまいます。

では、どうしたらよいのか?経常運転資金は、「短期継続融資」で借入することです。短期継続融資とは、手形貸付や当座貸越による借入であり、結果として「借りっぱなし(毎月返済なし)」にできます。

これにより、会社は、当初借入をした金額をそのまま借り続けられるので、資金繰りが安定するのがメリットです。ところが、現状、短期継続融資を利用している会社は少数派にあたります。

つまり、多くの会社は、経常運転資金を毎月分割返済しているわけです。その場合、1年以内返済長期借入金のなかに、経常運転資金分の借入返済額が含まれていることになります。

なので、社長は、それが含まれているようであれば、毎月分割返済の借入から短期継続融資への切り替えを進めるようにしましょう。このあたり、くわしくは別記事も参考にどうぞ↓

なお、短期継続融資は貸借対照表上、「短期借入金」の勘定科目で掲載します。1年以内返済長期借入金とは区別をすることで、「簡易キャッシュフロー」との比較から除外もできます。

ところで、なぜ、経常運転資金分の借入(短期継続融資)は、返済原資として簡易キャッシュフローを必要としないのか?売上債権や棚卸資産が、返済原資だからです。

それらは、いずれ現金化できるものであり、返済にあてることができます。だからこそ、借りっぱなしにできる、ということでもあるわけです。

1年以内返済長期借入金分を借りる

できあがったばかりの決算書を見たときに、1年以内返済長期借入金の額が1,000万円だったとします。このとき、社長が何を考えるべきなのか?

それは、「少なくとも、1,000万円を銀行から借りよう」ということです。これを実現できれば、もし利益がゼロだったとしても、向こう1年、資金繰りに困ることはありません。

社長にとって、資金繰りの不安はストレスであり、借入によって不安を解消できれば、経営に集中することができます。結果、利益を出せれば、借りたおカネも返せるというものです。

ゆえに、決算がおわったらまず、1年以内返済長期借入金の額を目安に、銀行から借入できるように動くことが大切になります。具体的には、決算書を持って、銀行へ決算報告に行くことです。

その場で、決算内容の説明をしつつ、最終的には、融資提案をうながすのが目的になります。このあたり、くわしくは動画にまとめましたので、ご参考にどうぞ↓

このような対応ができず、おカネに困ってから、あわてて融資を受けようとする社長が少なくありません。あわてるようすを見た銀行は、警戒もしますから、融資が受けにくくなってしまいます。

そうならないように、「あらかじめ借りておく」というのが、中小企業の財務戦略です。中小企業は大企業とは違います。借りたいときに借りられるほどの信用はないものと考えておきましょう。

まとめ

勘定科目の1つ、1年以内返済長期借入金について。その金額を見て、社長が考えるべきこととは何なのか?と聞かれて、回答に窮するようであれば要確認です。

放っておくと、資金繰りに問題を生じることになりかねず、問題への対応も後手に回ってしまいます。本記事の内容を理解したうえで、自社の1年以内返済長期借入金を確認してみましょう。

1年以内返済長期借入金」を見て社長が考えるべきこと
  • 簡易キャッシュフローとの比較
  • 経常運転資金分の借入が含まれるか
  • 1年以内返済長期借入金分を借りる
勘定科目「1年以内返済長期借入金」を見て社長が考えるべきこと

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