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『平均月商』というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標3選

平均月商というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標

銀行はしばしば、平均月商を「モノサシ(基準)」にして、融資先の決算書を見ています。

というわけで、平均月商を基準にした財務指標についてのお話です。

目次

平均月商というモノサシを手にする銀行

「平均月商(へいきんげっしょう)」という言葉をご存知でしょうか。算式であらわすとこうなります ↓

平均月商の算式

平均月商 = 年間売上高 ÷ 12ヶ月 

つまり、平均月商とは「1ヶ月平均の売上高」のことです。

ちなみに。年間売上高のことは「年商(ねんしょう)」と言います。「商」は「売上高」の意味を持つわけですね。

さて、その「平均月商」について。

銀行はしばしば、平均月商を「モノサシ(基準)」にして、融資先の決算書を見ています。

まずは決算書から、その融資先の平均月商を計算してみる。そして、その平均月商を基準にした「財務指標」でもって、決算書の内容の善し悪しを見ている、ということです。

ならば、銀行からおカネを借りる側も、モノサシの使い方を理解しておくほうがよいでしょう。融資が受けやすい・受けにくいを知る目安になります。

というわけで。平均月商を基準にした財務指標のうち、おもな3つについてお話をしていきます。こちらです ↓

「平均月商」というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標
  1. 現預金月商倍率(手元流動性比率)
  2. 借入金月商倍率
  3. 〇〇回転期間

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

「平均月商」というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標

現預金月商倍率(手元流動性比率)

平均月商をモノサシにした財務指標の1つめは「現預金月商倍率(手元流動性比率とも呼ばれます)」です。その算式がこちら ↓

現預金月商倍率の算式

現預金月商倍率 = 現預金 ÷ 平均月商

上記のとおり、現金・預金の残高が平均月商の何倍あるか?をはかるのが現預金月商倍率です。

言うまでもないことですが、現金・預金が無くなると会社はつぶれてしまいます。ゆえに、現金・預金が多ければ安全、少なければ危険、と銀行は見ているわけです。

この点で、現預金月商倍率が「1未満」は、非常に危険な状態だと言えます。なぜなら、ほとんどの会社では「資金不足」を起こすような水準だからです。

たとえば。ひと月の売上 100、仕入・経費 95、現金・預金 90の会社があったとして。この会社の現預金月商倍率は1未満です。

売上 100が入金すればよいですが、仕入・経費 95の支払がそれよりも先だと資金不足を起こします(90 − 95 = −5)。

したがって、現預金月商倍率は「少なくとも1以上」、「できれば2以上」。そのあたりが銀行が考える安全の目安です。

現金・預金が少ない会社は危険なので融資が受けにくくなる、ということを覚えておきましょう。

なお、会社が目指すべき現預金月商倍率として、わたしは「3以上」をおすすめしています。さらに言えば「6以上」。

そこまでの現金・預金があると、不測の事態が起きてしまったとき、新規出店や新規採用などの投資機会がおとずれたときに「おカネが無い…」で困ることが少なくなります。

このときの現金・預金は自己資金がベストですが、自己資金が貯まるまでは「借りてでも」じゅうぶんな現金・預金を持つ。ひとつの財務戦略です。ぜひ検討してみましょう。

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借入金月商倍率

平均月商をモノサシにした財務指標の2つめは「借入金月商倍率」です。その算式がこちら ↓

借入金月商倍率の算式 その1

借入金月商倍率 = 借入金 ÷ 平均月商

上記のとおり、借入金の残高が平均月商の何倍あるか?をはかるのが借入金月商倍率です。

これまた言うまでもないことですが、借入金がが多くなると返済や利息の負担で会社は厳しくなります。ゆえに、借入金が多ければ危険、少なければ安全、と銀行は見ているわけです。

この点で。業種・業態などにもよりますが、おおむね、借入金月商倍率が「6」を超えると非常に危険なレベル。「3」を超えると警戒レベル、が目安になります。

とりわけ平均月商の6ヶ月分、つまり、半年分の売上高くらいまで借入金が増えると非常に危険だ、これ以上の融資はできない、というのが銀行の見方です。

実際、そのくらい借入金が多いと返済・利息の負担が大きくなり、資金繰りに支障をきたすことになります。

ただし。借入金が多くても、現金・預金もまた多ければ、それは借りていないのといっしょです。

たとえば、月の売上 100、借入金 800、現金・預金 600の会社があったとして。この会社の借入金月商倍率は「8」です。「6」を超える非常に危険なレベルです。

けれども、現金・預金が 600もあります。もし、この 600で借入金を返済してしまえば、借入金は 200(800 − 600)です。

というわけで、現金・預金が多い場合の借入金月商倍率は次のように計算をします ↓

借入金月商倍率の算式 その2

借入金月商倍率 =(借入金 − 現金・預金) ÷ 平均月商

この算式でさきほどの会社(月の売上 100、借入金 800、現金・預金 600)の借入金月商倍率を計算すると「2」になります。安全な水準です。

このことから、前述した「借りてでもじゅうぶんな現金・預金を持つ」というのは、銀行から見ても危険ではないことがわかります。

〇〇回転期間

平均月商をモノサシにした財務指標の3つめは「〇〇回転期間」です。〇〇には売掛金、たな卸資産、買掛金などいろいろ当てはまります。算式がこちら ↓

〇〇回転期間の算式

〇〇回転期間 = 〇〇の残高 ÷ 平均月商

上記のとおり、〇〇の残高が平均月商の何倍あるか?をはかるのが〇〇回転期間です。

たとえば、売掛金回転期間の場合。月の売上 100、売掛金 250の会社であれば、売掛金回転期間は「2.5」と計算されます。

つまり、売掛金は平均月商の 2.5ヶ月分というわけです。

ところが、この会社の売上入金が「月末締め・翌月末入金」だとしたら。2.5ヶ月の売掛金って多すぎるよね、ということになります。

仮に月初に売って、翌月末に入金しても2ヶ月が最大だからです。

ということは、売掛金のなかに入金遅延や回収不能などの不良債権、あるいは架空売上による架空債権があるのでは? との疑いが生じます。

銀行はそのようにして、〇〇の残高に異常がないか?を見ているのです。

たな卸資産回転期間であれば、業種・業態にもよりますが、おおむね「1」を超えると「なんかちょっと多いなぁ」と見られることでしょう。

たな卸資産回転期間が「1」を超えるということは、1ヶ月以上のあいだ商品が売れていないことをあらわします。売上不振や不良在庫が疑われるところです。あるいは在庫管理の悪さを疑われるかもしれません。

なお、売掛金回転期間、たな卸資産回転期間、買掛金回転期間を使って、「運転資金回転期間」を求めることができます ↓

運転資金回転期間の算式

運転資金回転期間 = 売掛金回転期間 + たな卸資産回転期間 − 買掛金回転期間

たとえば、売掛金回転期間「1.5」、たな卸資産回転期間「0.5」、買掛金回転期間「1」の会社があったとすると。運転資金回転期間は「1」です(1.5 + 0.5 − 1 = 1)。

これは、この会社が平均月商の「1」ヶ月分のおカネを必要としていることをあらわします。どういうことかと言うと、

売掛金は入金しておカネになるのを待っている金額であり、たな卸資産は売れておカネになるのを待っている金額です。

これに対して、買掛金は支払いを待ってもらっている金額です。

両者の差額である「運転資金(売掛金+たな卸資産 − 買掛金)」くらいのおカネを持っていないと、経費の支払いなどができないことになります。

ゆえに、運転資金(売掛金+たな卸資産 − 買掛金)分の融資については、銀行も必要な融資として理解しています。

実際に融資をするにあたっては、融資金額の妥当性をチェックするために「運転資金」の算出が欠かせません。その算出に関わる財務指標として「運転資金回転期間」を知っておくとよいでしょう。

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まとめ

銀行はしばしば、平均月商を「モノサシ(基準)」にして、融資先の決算書を見ています。

銀行からおカネを借りる側も、モノサシの使い方を理解しておきましょう。融資が受けやすい・受けにくいを知る目安として役立ちます。

「平均月商」というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標
  1. 現預金月商倍率(手元流動性比率)
  2. 借入金月商倍率
  3. 〇〇回転期間
平均月商というモノサシで見る銀行融資に関わる財務指標

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