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納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ【コロナ禍の資金繰り】

納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ【コロナ禍の資金繰り】

新型コロナウィルスの影響を受けた会社・個人への緊急対応のひとつに「納税猶予」があります。

これをふまえて、「納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ」というお話です。

目次

納税猶予はいちばんに選択すべきか?

本記事の投稿日現在(2020年6月10日)、新型コロナウィルスの影響によって、多くの会社・個人事業者が厳しい資金繰りに苦しんでいます。

これを受けて、国の主導のもと、各種の融資や助成金、給付金などの「緊急対応」が準備・実施されているところです。

その「緊急対応」のひとつに、「納税猶予」が挙げられます。文字どおり、納税を猶予する。コロナの影響を受けた会社・個人の納税を一定期間待ちますよ、というのが納税猶予です。

ここで考えるべきは、納税猶予をすべきかどうか? 納税するおカネが無いからと言って、いちばんに納税猶予を「選択」すべきかどうか? です。

選択の順序で言えば、銀行借入が先ということもありえます。借入ができなければ、リスケ(返済猶予)も選択肢のひとつです。

そのあたりの考え方について、このあと次のようなお話をしていきます ↓

このあとのお話の内容
  • 銀行借入の大前提は「納税」と心得る
  • 納税猶予よりも銀行借入
  • 納税猶予するならリスケ
  • それでもダメなことはある

さきに結論を言えば、「納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ」です。

くわしくはこのあと、順番に見ていきましょう。

 

銀行借入の大前提は「納税」と心得る

納税猶予を考えるにあたって。まずは、銀行借入の大前提をお話しておきます。それは「納税」です。

銀行から借入をするためには、納税が済んでいることが前提になる。だから、税金に未納があると銀行は融資をしない。これを忘れてはいけません。

ではなぜ、納税が済んでいないと銀行は融資をしないのか? 次のような理由が挙げられます ↓

  • ルール(納期限までに納税する)を守れない会社・人は信用できない
  • 国民の義務である納税をしない会社・人に融資をするわけにはいかない
  • 差し押さえの場面では、借入返済よりも国税納税が優先されるため、融資すると回収しそびれる可能性が高い

だから、納税が済んでいないと、銀行から借入をすることができないのです(未納が少額、分割納税できることが確実である場合など、例外はありますが。あくまで例外です)。

では、このたびのコロナ緊急対応としての「納税猶予」はどうなのか? 「猶予 = 納税が済んでいない」と考えれば、やはり銀行から借入することはできないのか?

必ずしも借入できないわけではありません。コロナ関連の融資について言えば、借入できる可能性があります。

公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」をはじめ、コロナ関連の融資については、「納税」を前提にはしていないからです。

通常の融資であれば求められる、「納税証明書や税金納付書(領収書)の提示」は求められず。結果として、税金の未納があったとしても借入できる状況にあります。

もちろん、ぜったいに借りられるとまでは言えませんが。「借りられる可能性がある」という点では、通常の融資とコロナ関連の融資には違いがあるということです。

じゃあ、さっそく納税猶予を利用するか? と考えるのは尚早だ。とのお話が次になります。

納税猶予よりも銀行借入

納税猶予について。

言うまでもなく、猶予とは「待ってもらうだけ」であって、支払いを免れるわけではありません。猶予期間が終われば、当然、支払いをしなければいけない。

もし、そのときに資金繰りが厳しい場合にはどうでしょう? 納税ができずに「未納」になってしまう可能性があります。

すると、銀行から融資を受けることができなくなるのは、さきほどもお話したとおりです。

コロナ禍をなんとかしのぎ、あともう一歩というところで融資が受けられないのではつらい思いをすることになるでしょう。

将来に銀行借入の選択肢を残すためにも、納税猶予をいちばんには選択せず、先に納税を済ませることをおすすめします。

では、どうやって納税をするか?

銀行借入です。とくに、コロナ関連の融資。これを利用して、できるだけの借入をすることです。

誤解を恐れずに言えば、コロナ関連の融資は、通常の融資に比べると「受けやすい」ところに特徴があります。通常であれば融資を受けるのが難しい会社(現状で赤字の会社)でも、融資を受けられることが少なくありません。

コロナの影響を受ける期間を予測し、そのあいだに不足するであろう資金を借入する。会社・事業の継続を考えているのであれば、できるだけのおカネを確保することが先決です。

このとき、「コロナの影響を受ける期間」をあまり楽観的に予測しないようにしましょう。そもそも未曾有の事態なのですから予測すらできません。だったら、悲観的に予測する。長引くと予測する。

そのうえで、できるだけの借入をすることです。くわしくはこちらの記事もどうぞ ↓

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というわけで。納税猶予よりも銀行借入、借入をしてでも納税をする。というお話をしてきました。

けれども。借入をできない場合はどうするのか? コロナ関連の融資でさえも受けられない場合にはどうしたらいいのか? そのときには納税猶予しか無いだろう、と思われるかもしれません。

たしかに、そのとおりです。ただし、納税猶予をするのであれば、気をつけるべきことがある。というのが次のお話になります。

 

納税猶予するならリスケ

納税も厳しい、コロナ関連の融資も受けられない… となると、「納税猶予」もやむなしです。

このとき、あわせて考えるべきことに「リスケ」があります。リスケとは、銀行に対する「返済条件の変更」です。言い換えると「返済猶予」。すでに借りているおカネの返済を待ってもらう。

納税猶予と同時に、銀行にリスケのお願いもするようにしましょう。

ひとまず、納税猶予をしただけで安心してしまうと。コロナの影響下にありながらも借入返済は続くことになります。当然、手元のおカネはどんどん減っていきます。

その段階(手元のおカネがほとんどない)で、リスケをお願いしようとする会社は少なくありません。

が、そこまで状態が悪くなった会社に対しては、「リスケさえもできない」と覚えておきましょう。

なぜなら、リスケをしたとしても「どうせもたない」と銀行は考えるからです。返済を止めても、事業活動に必要な支払いはしなければいけません。その支払も危ぶまれるほどに手元のおカネがなければ、リスケさえできないのです。

さいごはリスケをすればなんとかなる、と考えている会社がありますが。それは誤解ですから、じゅうぶんに気をつけましょう。

あまりに「さいご」まで引っ張ると、リスケはできない。できるはずのリスケもできなくなる。結果として、再起のチャンスを失ってしまいます。

したがって、リスケの判断は「早め」です。

資金繰りを予測してみて、このままでは数ヶ月もつかどうか… でも、新規の借入は断られている… であれば、リスケです。数ヶ月分のおカネが手元にあるうちにリスケの判断をしましょう。

この点で。納税猶予をするくらいですから、資金繰り予測は厳しいに違いありません。納税猶予をするなら、あわせてリスケ。そのように考えておくことをおすすめします。

 

それでもダメなことはある

納税猶予をして、あわせてリスケをして。これでだいじょうぶか? と言えば。必ずしもそういうわけではないでしょう。

残念ではあるけれど、あきらめなければいけない状況もあるはずです。

コロナの影響を含めて、あまりに状況が悪く。回復・改善が見込めない。納税猶予やリスケをしても、その先に可能性が無い… となれば、「撤退」を考えなければいけません。

無理をして傷口を広げるよりも、いちど撤退をするほうが「長期的にはベスト」というケースがあります。悩んだときには、顧問税理士に相談するなどしてみましょう。

短期的にはあきらめたとしても、長期的にはあきらめない道は必ずあります。

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まとめ

新型コロナウィルスの影響を受けた会社・個人への緊急対応のひとつに「納税猶予」があります。

これをふまえて、「納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ」というお話をしてきました。

コロナ禍における資金繰りの考え方として、参考にしていただけましたら幸いです。

納税猶予よりも銀行借入、納税猶予するならリスケ【コロナ禍の資金繰り】

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