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ウチの会社、あとどれくらい銀行融資を受けられる?の計算方法

ウチの会社、あとどれくらい銀行融資を受けられる?の計算方法

銀行融資を受けようとする会社は、「ウチの会社、あとどれくらい借りられる?」が気になりますよね。

そこで、あとどれくらい銀行融資を受けられるのか?の計算方法についてお話をしていきます。

目次

考え方がわかれば恐るるに足らず。

会社が銀行から融資を受けようとする場合、気になることのひとつに「ウチの会社、あとどれくらい借りられる?」があるでしょう。

たとえば、いま現在 3,000万円の借入があるとして。あと、何万円の融資を受けられるのか。もちろん、融資金額を決めるのは銀行ですから、審査を受けてみなければわかりません。

ただ、それでも。あとどれくらい銀行融資を受けられるかの「目安」はあります。ずばり、こちらです↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

(税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金)

一見すると、「なんじゃこりゃ?」と思われるかもしれませんが。考え方がわかれば、それほど難しい算式ではありません。

というわけで。上記の算式を使いこなせるように、「ウチの会社、あとどれくらい銀行融資を受けられる?の計算方法」について解説をしていきます。こちらです↓

このあとのお話の内容
  • 「税引後利益+減価償却費」が返済原資
  • 現金預金があれば、その分の借金は無いのと同じ
  • 経常運転資金は借金にあらず

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

「税引後利益+減価償却費」が返済原資

ウチの会社、あとどれくらい銀行融資を受けられる? について。冒頭の算式を再掲します↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金)

このうち、まずは、算式のアタマにある「税引後利益 + 減価償却費」から見ていきましょう。

「税引後利益 + 減価償却費」とは、ひとことで言うと「返済原資」です。

「税引後利益」は「税金を払ったあとに残った利益」。銀行から借りたおカネは、この税引後利益から返済することになります。

ちなみに。税引後利益から支払うのは「元金」のみ。「利息」については、経費として税引後利益のなかで支払済みです。

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その「税引後利益」に「減価償却費」をプラスしているのはなぜか? 減価償却費が「おカネの支払をともなわない費用だから」です。

そもそも減価償却とは、金額が高いモノ(機械とかクルマとか)を購入したときに、「いちどには経費にせず、複数年に分割して経費にする」という会計のテクニックを言います。

たとえば、300万円のクルマを買ったとして。買った年に 300万円ぜんぶを経費にするのではなく、50万円ずつ6年間に分けて経費にします(モノによって何年で分割するかは決まっています)。

たとえば、クルマを買った2年めに、経費として計上される「減価償却費」は 50万円です。そのうえで、税引後利益が 500万円だったとします。

減価償却費 50万円は、税引後利益 500万円のなかで差し引き済みです。けれども、50万円のおカネを支払ったわけではありません。おカネを支払ったのは「買った年」であって、「買った2年め」ではないからです。

なので、「買った2年め」に返済に回せる金額(=返済原資)は? と言うと。税引後利益 500万円に、いちどは経費にした 50万円を足し戻した金額、ということになるわけです。

ちょっと難しいところかもしれませんが。「まぁ、そういうもんなんだな」として、ひとまずは「返済原資 = 税引後利益 + 減価償却費」だと覚えてしまいましょう。

そのうえで。

銀行は、「返済原資の10倍」を融資上限の目安と考えています。これは、どの銀行にも共通する考え方です。

返済原資の 10倍以内であれば、融資の余地はアリ。10倍を超えていたら、これ以上の融資は厳しい。銀行はそのように見ています。

ここでもういちど、算式を見てみましょう↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

(税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金)

ここで確認すべきは、算式前半の「(税引後利益 + 減価償却費)×10 − いま現在の借入金残高」までです。

たとえば、税引後利益 500万円、減価償却費 100万円、いま現在の借入金残高 5,000万円の会社があったとしたら。こうなります↓

(税引後利益 500万円 + 減価償却費 100万円)×10 −(いま現在の借入金残高 5,000万円)= 1,000万円

つまり、「あと 1,000万円くらいは融資が受けられそうかなぁ」ということです。

たくさんの融資を受けたいのであれば、「税引後利益」が必要であることを理解しておきましょう。税金を嫌って、利益を抑え込んだりすると、その分だけ融資を受けられる金額が少なくなってしまいます。

現金預金があれば、その分の借金は無いのと同じ

それでは、算式の続きを見ていきましょう。確認のために算式を再掲します↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

(税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金)

さきほどまでに、「いま現在の借入金残高」まで確認をしました。ここでは、そのあとの「現金預金残高」をマイナスする部分についてお話をしていきます。

たとえば、さきほど例に挙げた、税引後利益 500万円、減価償却費 100万円、いま現在の借入金残高 5,000万円の会社。この会社の現金預金残高が 1,500万円あったとすると。

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」は、こうなります↓

(税引後利益 500万円 + 減価償却費 100万円)×10 −(いま現在の借入金残高 5,000万円 − 現金預金残高 1,500万円)= 2,500万円

つまり、「あと 2,500万円くらいは融資が受けられそうかなぁ」ということです。現金預金残高が無い場合に比べると、1,500万円多い。現金預金残高がある分だけ、借入余力が増えたことをあらわします。

ではなぜ、現金預金残高があると、借入余力が増えるのか?

現金預金があれば、そのおカネで返済しようと思えば、いつでも返済できるからです。そう考えると、現金預金残高に相当する借入金は無いのと同じ。

だから、算式では「いま現在の借入金残高」から、「現金預金残高」をマイナスしているのです。

なお、現金預金残高が多い会社は、「融資が受けやすい」という一面があります。現金預金残高があれば、少々赤字になったりしても、しばらくは返済を続けることができるからです。

ゆえに、銀行は、現金預金残高が多い会社には融資をしやすい。現金預金残高が多い会社は融資を受けやすい。その現金預金残高がもし、借入をして増やしたものだとしてもです。

経常運転資金は借金にあらず

さらに、算式の続きを見ていきましょう。確認のために算式を再掲します↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

(税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金

さきほどまでに、「現金預金残高」まで確認をしました。ここでは、そのあとの「経常運転資金」をマイナスする部分についてお話をしていきます。

そもそも、経常運転資金とは。算式であらわすと、「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」です。

売上債権とは、売掛金や受取手形のこと。たな卸資産とは、在庫のこと。仕入債務とは、買掛金や支払手形のこと。

その「経常運転資金」は、会社が「事業を続けるにあたって必要なおカネ」になります。どういうことかと言うと、

売掛金や受取手形は、おカネが入金されるのを待っている状態です。ゆえに、その分のおカネがないと、仕入代金や経費の支払ができません。

たな卸資産は、売れるのを待っている状態です。ゆえに、売れておカネにならないと、やはり、仕入代金や経費の支払ができません。

これらを受けて、「売上債権 + たな卸資産」の分だけおカネが無いと、会社としては資金繰りに問題が起きてしまうことがわかります。

いっぽうで、買掛金や支払手形は、おカネの支払を待ってもらっている状態です。なので、「売上債権 + たな卸資産」から「仕入債務」の分はマイナスをする。

結果として、「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」に相当するおカネが必要だ、ということになります。

このおカネを「自己資金」で用意できればよいのですが。なかなか厳しいものがあるので、経常運転資金分のおカネを銀行から借りるのがセオリーです。

銀行もまた、それを理解しています。経常運転資金分のおカネは、事業に必要であることが明らかなのだから融資をする。

また、経常運転資金には、売上債権や在庫といった「資産の裏付け」があります。いざとなったら、売上債権や在庫を現金化することで、返済をしてもらえばいい。

資産の裏付けがあるのなら、経常運転資金分の融資は融資にあらず、とも言えるわけで。銀行としては、融資をしやすいのです。

ここで、あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」の算式に戻ってみましょう。経常運転資金分の融資は融資にあらず、ということで、「いま現在の借入金残高」から「経常運転資金」をマイナスしています↓

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」

(税引後利益 + 減価償却費)×10 −(いま現在の借入金残高 − 現金預金残高 − 経常運転資金

たとえば、さきほど例に挙げた、税引後利益 500万円、減価償却費 100万円、いま現在の借入金残高 5,000万円、現金預金残高 1,500万円の会社。この会社の経常運転資金が 600万円あったとすると。

あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」は、こうなります↓

(税引後利益 500万円 + 減価償却費 100万円)×10 −(いま現在の借入金残高 5,000万円 − 現金預金残高 1,500万円 − 経常運転資金 600万円)= 3,100万円

つまり、「あと 3,100万円くらいは融資が受けられそうかなぁ」ということです。経常運転資金分の借入は借入にあらず、と理解して、あとどれくらい銀行融資を受けられるか?の「目安」を考えるようにしましょう。

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まとめ

銀行から融資を受けようとする会社は、「ウチの会社、あとどれくらい借りられる?」は気になるところでしょう。

そこで。あとどれくらい銀行融資を受けられるのか?の計算方法について、その算式と考え方とを理解しておくのがおすすめです。

ウチの会社、あとどれくらい銀行融資を受けられる?の計算方法

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