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コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目とは?

コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目とは?

現状、新型コロナの影響を受けている決算書は、けして少なくないものと想像します。

そこで。コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら、説明すべき勘定科目がありますよ。という、お話をしていきます。

目次

そもそも説明はだいじ、コロナのいまはもっとだいじ。

きょうは、2021年5月31日。3月決算の会社が、決算書(のコピー)を銀行に渡す時期でしょう。現状、新型コロナの影響を受けている決算書は、けして少なくないものと想像します。

この点で、会社が気をつけるべきこと。それは、銀行に決算書を渡すだけではなく、「説明」をする、ということです。コロナの影響に限らず、そもそも「説明」はだいじ。けれども、コロナの影響を受けているのであれば、いつも以上に「説明」がだいじです。

そこで。コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら、説明すべき勘定科目についてお話をしていきます。ぜんぶで7つ、次のとおりです↓

コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目
  1. 売上高
  2. 雑収入
  3. 売掛金
  4. たな卸資産
  5. 買掛金
  6. 借入金

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目

1.売上高

コロナの影響によって、売上が減ってしまった… という会社は少なくないでしょう。

そういう会社は、決算書の売上高が減っている点について、「(コロナ前に比べて)どの商品・サービスの売上が、いくら減ったのか?」を説明することが大切になります。そのうえで、減った売上の回復見込みについても、説明をしましょう。

コロナが収束すれば、100%の回復を見込んでいるのか。100%の回復が見込めないのであれば、減った分の売上・減った分の利益をどう補うのか。補うにあたっての数値計画・行動計画まで示したいところです。

なお、売上が減った場合ばかりではなく、コロナによって売上が増えた場合にも「説明」は必要になります。なぜなら、増えた売上は「一過性」ということもあるからです。

たとえば、マスクや消毒液などの衛生関連用品は、コロナが収束するにしたがって売上減が想定されます。完全になくなりはしないにしても、いまほどは売れないかもしれないということです。

そのあたり、「一過性の影響がどれくらいあるのか?」を銀行に説明するようにしましょう。説明がないと、コロナ後に売上が減少した際、銀行がびっくりしてしまうことがありますので。

2.雑収入

コロナ禍では、国や地方自治体から、さまざまな支援金や給付金が打ち出されました。おかげで、なんとか資金繰りできている… という会社もあることでしょう。

そういった支援金や給付金の受給額を、「雑収入」として決算書に掲載している場合。雑収入の「内訳」を銀行に説明することが大切です。

内訳なら、決算書に付随する「勘定科目内訳明細書」に記載している。そう思われるかもしれませんが、それを銀行が見てくれているかどうかは、また別のハナシです。

決算書だけを見た銀行から、雑収入は「臨時収入」だと見られれば、その分、決算書の経常利益を下方修正される可能性があります。

ところが、コロナ禍の支援金や給付金は「コロナの影響による売上・利益の減少を補う」性質のものですから、「臨時収入」というわけではありません。経常利益を構成する収入だ、と言えるでしょう。

そう考えると、支援金や給付金を「雑収入」とはせず、個々の具体的な支援金・給付金名称で決算書に計上するのも1つの方法です。一見して、支援金・給付金だとわかります。

3.売掛金

通常、売上高が減少すれば、売掛金も減少するものです。売掛金の回収条件(回収サイト)が変わらない限り、売掛金の減少割合は、売上高の減少割合とほぼほぼ一致します。

ところが、一致しないケースはあるものです。売上先が業績不振のため、支払が遅れているとか。売上先が音信不通になって、回収できなくなった売掛金があるとか。

すると、売上高の減少割合に対して、売掛金の減少割合は小さくなります。売掛金のなかに、支払いが遅れている売掛金や、回収できなくなった売掛金が残っているからです。

このような場合には、銀行に説明をするようにしましょう。説明がないと、銀行からは「架空売上の計上(粉飾決算)」を疑われる可能性があります。

多くの場合、架空売上の計上をするときには、架空の売掛金を計上するものです。結果として、売掛金の金額が大きくなり、売上高の減少割合に対して、売掛金の減少割合は小さくなります。

「架空売上の計上(粉飾決算)」を疑われると、銀行からの融資が受けにくくなりますから、疑いを晴らすことができるように、状況を説明をするようにしましょう。

4.たな卸資産

通常、売上高が減少すれば、たな卸資産(在庫)も減少するものです。在庫水準が変わらない限り、在庫の減少割合は、売上高の減少割合とほぼほぼ一致します。

ところが、一致しないケースはあるものです。コロナの影響で、売れなくなってしまった・売れにくくなってしまった在庫が増えた… ということはあるでしょう。

すると、売上高の減少割合に対して、在庫の減少割合は小さくなります。在庫のなかに、売れなくなってしまった・売れにくくなってしまった在庫が残っているからです。

このような場合には、銀行に説明をするようにしましょう。説明がないと、銀行からは「架空在庫の計上(粉飾決算)」を疑われる可能性があります。さきほどの「架空売上」と同じことですね。

「架空在庫の計上(粉飾決算)」を疑われると、やはり、銀行からの融資が受けにくくなりますから、疑いを晴らすことができるように、状況を説明をするようにしましょう。

5.買掛金

通常、売上高が減少すれば、買掛金も減少するものです。支払条件(支払サイト)が変わらない限り、買掛金の減少割合は、売上高の減少割合とほぼほぼ一致します。

ところが、一致しないケースはあるものです。自社の資金繰りを改善するために、取引先に支払条件を変更(支払サイトを延ばす)してもらったとか。自社の資金繰りが厳しく、支払が遅れているとか。

すると、売上高の減少割合に対して、買掛金の減少割合は小さくなります。買掛金のなかに、支払いサイトが延びた買掛金や、支払が遅れている買掛金が混じっているからです。

このような場合には、銀行に説明をするようにしましょう。説明がないと、銀行からは「資金繰りが厳しく、危ない会社だ」と心配をされる可能性があります。当然、融資が受けにくくなります。

資金繰りが厳しいのは事実にしても、「どのくらい厳しいのか? いつまで厳しいのか? 回復見込み、回復する方法はあるのか?」などは説明することです。銀行の心配をやわらげる効果があります。

6.借入金

コロナ禍では、国や地方自治体が主導のもと、さまざまな融資が実施されました。これにより、借入金が大幅に増えた会社は少なくありません。

この点で、銀行の関心事は、「どの銀行からいくらの融資を受けているのか? 返済することができるのか? 借りたおカネは何に使ったのか?」にあります。これらは、決算書を見るだけではわかりません。

したがって、まずは、すべての借入金の情報を一覧にした「借入金一覧表」をつくることです↓

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これを提示することで、銀行は「どの銀行からいくらの融資を受けているのか?」を知ることができます。銀行は「他行の融資」についてはわかりませんので、こういった情報を求めていることを理解しておきましょう。

また、「資金繰り表」や「経営計画書」の提示も重要です。

向こう1年ていどの資金繰り予定表を提示することで、銀行は「返済することができるのか?」の検証がしやすくなります。なお、現状では返済を据え置いている会社も多いでしょうから、据置期間終了後に「返済できるだけの利益」は確保できるのかを経営計画書で説明できるとよいでしょう。

さいごにもうひとつ、借りたおカネは何に使ったのか? たとえば、1,000万円借りたら、1,000万円を何に使ったのか?

仕入代金や諸経費の支払に使ったのか(赤字補てん)。使わずに預金として残っているのか。 あるいは、なにか固定資産を買ったのか、など。銀行に説明をするようにしましょう。

ちなみに、運転資金として借りたおカネで、固定資産を買うのはよくありません。資金使途違反として、しかるべきペナルティを受けることになります。同様に、運用目的で株や投資信託を買ったり、社長個人に貸し付けたりもよくありません。気をつけましょう。

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まとめ

現状、新型コロナの影響を受けている決算書は、けして少なくないものと想像します。

コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら、説明すべき勘定科目があること。どのような説明をすればいいか、押さえておくようにしましょう。今後、融資の受けやすさに影響するところです。

コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目
  1. 売上高
  2. 雑収入
  3. 売掛金
  4. たな卸資産
  5. 買掛金
  6. 借入金
コロナの影響を受けた決算書を銀行に渡すなら説明すべき勘定科目とは?

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