銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理

銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理

社長が会社を経営するうえで、理解しておきたい経理処理。そのなかから、銀行融資に関する経理処理について、社長が勘違いしがちなものを取り上げて確認をしていきます。

目次

銀行融資は資金繰りに欠かせない取引だから。

社長が会社を経営するうえで、理解しておきたいもののひとつが「経理処理」。いわゆる「仕訳」や「勘定科目」のたぐいです。

経理担当者や顧問税理士がいれば、細かいところまで関与する必要はないにせよ。「この取引については、どんな経理処理になるのか(経費になるかならないか?など)」くらいは理解をしておくのがよいでしょう。

この点で、社長が勘違いしているケースをときおり見かける「銀行融資に関する経理処理」を取り上げてみます。

銀行融資は、会社の資金繰りを安定させるうえで、欠かすことができない取引です。その経理処理を勘違いしていたのでは、会社の数字(業績)を見誤り、経営判断を誤ってしまう可能性もあります。具体的にはこちらです↓

銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理
  • 借入の返済 → 経費
  • 返済期間1年超の借入 → すべて長期借入金
  • 信用保証料の支払い → すべて経費

これら取引の経理処理について、このあと確認をしていきましょう。

銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理

借入の返済

銀行から融資を受けたのち、返済をしたときの経理処理について。たとえば、毎月 10万円の元金返済と1万円の利息支払いがある場合に、合計 11万円が「経費」になる。と、社長が勘違いしているケースがあります。

正しくは、「元金返済 10万円は負債の減額であり、経費になるのは利息支払いの1万円のみ」です。これを、元金返済も経費になると勘違いしていると、社長は「利益(収入ー経費)」を見誤ることになります。

ここで、銀行から融資を受けたときの経理処理をイメージしてみましょう。たとえば、1,000万円を借りたときに、その 1,000万円を「収入」と考える社長は多くないはずです。

その 1,000万円は、借りたものであり返さなければならず、「収入」ではなく「負債」であることをイメージできているから、ですね。だとしたら、返済をするときに「経費」にするのはおかしいと気づくことができるでしょう。

借りたときには収入にならず、返済をするときは経費になるのでは、融資を受ければ受けるほど会社の利益が減ってしまいます。言い換えると、借金をするほど節税ができてしまう…

などということはありません。借入の返済は、「借りたものを返すだけ」です。融資を受けたときには「負債(借入金)」が増加して、返済をしたときには「負債(借入金)」が減少する。これが、正しい経理処理になります。

なお、借入の返済が「経費」にならないということは、返済をするためには「利益」が必要だということです。

たとえば、毎月の返済が 10万円、毎月の利益が3万円の会社があったとします。返済は経費ではありませんから、利益の計算をするときに 10万円は考慮されていません。利益によって、手元に3万円のおカネが残るのだとすれば、会社は3万円のなかから返済をすることになります。

が、この会社の場合には返済が 10万円ですから、利益3万円では足りません。結果、差額の7万円は、手元のおカネを取り崩しながら返済をすることになります。もちろん、手元のおカネが足りなくなれば、会社はおしまいです。

これが、「借入金の返済原資は利益」といわれる理由になります。経理処理とあわせて押さえておきましょう。

返済期間1年超の借入

銀行から融資を受けるときには、返済期間を決めます。同じ借入であっても、その返済期間によって経理処理が変わることはご存知でしょうか。

具体的には、返済期間が「決算日からみて、1年超か1年以内か」で変わります。たとえば、決算日直前に、600万円を5年返済(60ヶ月で毎月 10万円の返済)で借入したとして。決算日時点でみると、1年以内に返済する金額は 120万円(10万円 × 12ヶ月)になります。1年を超えて返済する金額は 480万円です(600万円ー120万円)。

このとき、経理処理を通じて決算書には、流動負債として「1年以内返済長期借入金 120万円」、固定負債として「長期借入金 480万円」と記載する。というのが、正しい経理処理になります。

ところが、借入の全額を「長期借入金 600万円」として経理処理する、という勘違いをしているケースがあるので気をつけましょう。

この勘違いによって、どのような問題が起きるのかというと。社長が、決算書や試算表を見る際に、「財務の安全性」を見誤る可能性があります。ほんとうは「危険」な状態なのに、「安全」だと考えてしまう可能性がある、ということです。

財務の安全性の見方として、「流動資産」と「流動負債」の比較があります。

流動資産とは、現金預金に加えて、1年以内に現金化が予定される資産です。たとえば、売掛金、受取手形、棚卸資産、短期貸付金など。いっぽうで、流動負債とは、1年以内に支払いが予定される負債であり、買掛金や支払手形、未払金、1年以内に返済する借入金が含まれます。

そのうえで、流動資産の合計額と流動負債の合計額とを比べてみて、流動資産のほうが大きいのが望ましい状態です。1年以内に支払いが必要な流動負債よりも、1年以内に現金化される流動資産のほうが大きくないと、資金繰りに支障をきたしてしまうから、ですね。

というように、流動資産と流動負債との比較をするためには、流動資産と流動負債とを正しく把握しておかなければいけません。ゆえに、1年以内に返済する借入金を「長期借入金(固定負債)」と経理処理してしまうのは問題だとわかるでしょう。

これを社長が理解していたとしても、経理担当者や税理士が、銀行からの借入金をすべてまとめて「長期借入金(固定負債)」としていることがあるので注意が必要です。

また、1年以内に返済する借入金を「1年以内返済長期借入金」として区分することには、もうひとつのメリットがあります。それは、「資金調達目標額」がわかりやすいということです。

もし、決算書を見たときに「1年以内返済長期借入金 500万円」とあれば、その会社は、向こう1年で 500万円の返済が必要になることをあらわしています。その 500万円を借入できれば、社長は向こう1年、資金繰りに対する不安は小さくなるはずです(利益ゼロでも資金繰りは回るので)。

つまり、「1年以内返済長期借入金=資金調達目標額」と考えることができます。

信用保証料の支払い

民間の金融機関からの融資には、信用保証協会の保証付きになるものがあります。会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるため、融資を受けやすいのはメリットですが、会社は「信用保証料」を支払わなければいけません。

その信用保証料の経理処理について、全額が支払い時に経費になる、と勘違いしているケースがあります。正しくは、保証期間(返済期間)に応じて経費にする、です。

たとえば、信用保証料が 30万円、保証期間が5年(60ヶ月)の場合。経費にするのは、毎月5千円です(30万円 ÷ 60ヶ月)。にもかかわらず、支払時に 30万円がすべて経費になると考えていると、社長は利益を見誤ることになります。

融資金額が大きくなると、信用保証料もかなり大きくなるので、勘違いがないように気をつけましょう(コロナ禍では、信用保証料がゼロのケースもありましたが)。

具体的には、支払った信用保証料は「長期前払費用(固定資産)」という勘定科目で経理処理します。そのうえで、毎月、経費に振り替えるという流れです。さきほどの例であれば、毎月、長期前払費用を5千円減額して、経費を5千円計上する。

なお、繰り上げ返済をすると、信用保証料のいちぶが返金されるケースがあります。この場合には、返金された金額は「長期前払費用」を減額するという経理処理になり、収入として経理処理するわけではありません。

このあたり、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓

まとめ

社長が会社を経営するうえで、理解しておきたい経理処理。そのなかから、銀行融資に関する経理処理について、社長が勘違いしがちなものを取り上げてみました。

勘違いしたまま、会社の数字(業績)を見誤ったり、経営判断を誤ってしまうことがないように。勘違いがないかどうかを確認しておきましょう。

銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理
  • 借入の返済 → 経費
  • 返済期間1年超の借入 → すべて長期借入金
  • 信用保証料の支払い → すべて経費
銀行融資で社長が勘違いしがちな経理処理

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