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不良在庫?支払滞留?決算書の『商品』について銀行が考えていること

shouhin

在庫、ちょっと多いですよね?

銀行から聞かれたことはありませんか?ほかにも、「買掛金の支払サイトはどれくらい?」など。

銀行が決算書で気にする、「商品」に関するポイントについてお話しします。

目次

銀行融資で気にされる「商品」に関するポイント

融資を受ける場合などに提示する決算書。それを見て銀行は、さまざまなチェックをしています。

「商品」にまつわる「在庫」と「買掛金」

銀行が決算書にほどこす多彩なチェックのうち、今回は「商品」に関するものを見ていきます。具体的には、

  • 在庫(棚卸資産)
  • 買掛金

の2つです。

商品を購入する際、ツケ払いにすれば「買掛金」が発生します。

購入した商品が売れずに手元に残っているモノは「在庫(棚卸資産)」として、決算書に表現されます。

チェックの共通点は「長さ」

その「在庫」と「買掛金」について。

銀行がチェックする際の共通点がひとつあります。それは、「長さ」です。

在庫、買掛金が持つ時間的・期間的な「長さ」を、銀行はチェックしています。

その具体的なチェック方法を、このあと見ていくことにしましょう。

 

在庫(棚卸資産)のチェックポイント

はじめに、「在庫(棚卸資産)」のチェックについて。ポイントはその「長さ」です。

回転期間分析って知ってる?

結論からいきましょう。銀行は決算書を見て、次のような計算をしています。

  • 在庫(棚卸資産)÷ 年間売上高 × 365 日

たとえば、小売業 A社の決算書。在庫 2,000万円、年間売上高 1億2,000万円ならどうでしょう?

  • 2,000万円 ÷ 1億2,000万円 × 365日 =60.8333・・・日

ということで「60日」という数字が計算されます。

この「60日」を、A社の「在庫回転期間」あるいは「棚卸資産回転期間」と言います。

「回転期間」の数字が意味するところは、「商品を買ってから売れるまで何日かかるのか?」ということです。

つまり。A社では、商品を買ってから売れるまで、平均的に約2カ月かかるということを示しています。

ギョーカイ平均に照らせ

で。計算された「60日」だけをただ眺めていてもはじまりません。ふーん、と鼻を鳴らすばかりです。

そこで、業種別の平均的な数字と比較してみることにしましょう ↓

《 業種別 在庫回転期間(執筆者調べ) 》

サービス業10日
卸売業30日
小売業20日
建設業30日
製造業40日

さきほどのA社は小売業でしたが、その小売業の在庫回転期間平均値は「20日」です。A社の「60日」は平均に比べるとミョーに長い・・・長すぎる。

売れ残り、不良品、架空在庫の疑惑

A社のように、平均値に比べて在庫回転期間が長いという場合。次のような疑いが生まれます。

  • 売れ残りの商品が多いのではないか?
  • もう売れないような不良品があるのではないか?
  • 粉飾(細工して黒字を出す)するために架空在庫を計上しているのではないか? など
粉飾決算の手法
テクニックとして、在庫を架空計上するとその分利益が増えます。お手軽でメジャーな粉飾方法のひとつですが、良い子はマネをしないように

だからといって、「早く商品を処分しろ」「粉飾はよくありませんねぇ」などというハナシにはなりません。

銀行はただただ、決算書の在庫(棚卸資産)の金額を、「実際の価値・適正な価値と思われる金額」に修正するだけです。

在庫は「20日」分が実際値・適正値だと判断すれば、決算書の2,000万円を「666万円(2,000万円×20日/60日)」と置き換えます。

その分だけ、A社が持つ資産の価値が下がったことになり、銀行からの評価も下がることになります。

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買掛金のチェックポイント

続いて、「買掛金」のチェックについて。ポイントはやはりその「長さ」です。

買掛金の支払サイトを計算する

在庫では「在庫回転期間」を求めましたが、買掛金では「支払サイト」を求めます。

支払サイトというのは、仕入れた商品代金の請求日からその支払までの期間を言います。月末締め・翌月末払いであれば、支払サイトは「1か月」です。

これを銀行は決算書から、次のように計算します。

  • 買掛金残高 ÷ 平均月間仕入高

たとえば、B社の決算書。買掛金残高 1,500万円、仕入高 9,000万円ならば?

  • 平均月間仕入高=仕入高 9,000万円 ÷ 12か月=750万円
  • 1,500万円 ÷ 750万円 =2か月

B社の支払サイトは、「決算書上」は2か月だと計算されました。

ヒアリングと比較する 

そして銀行は、決算書上の「2か月」と、ヒアリングによる支払サイトとを比較します。

B社にヒアリングしたところ、もしも「おおむね月末締め・翌月末払い」の回答であれば。決算書の「2か月」は長すぎます。アヤシイ。

このとき怪しまれるのは、

  • この決算書合ってる?逆粉飾(細工して赤字を出す)してない?
  • おカネが無くて支払が滞っている? など

利益が出ない、おカネが無さそうな会社に、銀行は冷たいものです。

弁明は積極的に

銀行が感じた怪しさが事実であれば何も言えませんが。違うのであれば、自ら積極的に説明しましょう。

たとえば考えられる事情としては、

  • 決算近くに商品をまとめ買いした
  • 決算日が休日(銀行休み)であったため、決算日の翌日に支払をした など

銀行に聞かれてから「アレ、なんだっけ?」と首を傾げているようでは、あなたの財務力さえもが疑われることになります。

決算書を銀行に渡すのであれば、注意すべきポイントはあらかじめ整理して伝えるのがベストです。

 

まとめ

銀行が決算書の商品について見るポイントについてお話をしてきました。

在庫、買掛金のいずれも。その「長さ」について確認、理解をしておくようにしましょう。

 

 

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